タイに行くまでは、正直「昆虫なんて絶対ムリ」と思っていました。
日本ではほとんど馴染みがないし、何より見た目のインパクトが強烈すぎて、想像するだけで鳥肌が立つ……。
そんな私が、どうして昆虫食に挑戦することになったのか。
そして気づけば「もう一袋おかわり！」なんて言ってしまうほどハマってしまった理由。
今回は、タイ旅行中に実際に私が食べた昆虫料理と、現地の人たちに教えてもらったおすすめの食べ方をご紹介します。
これからタイに行く方や、ちょっとだけ興味がある方の背中を押せたら嬉しいです。
「えっ、おいしいかも？」メガチョーンとの運命の出会い
最初に挑戦したのが「メガチョーン」。
タイ語で“小さな虫”という意味ですが、実際は小さなバッタのような見た目です。
この子と出会ったのは、タイ東北部のイサーン地方を旅していたとき。
市場の屋台でスパイスと一緒にジュウジュウ炒められている姿に、なぜか心が惹かれたんです。
屋台のおばちゃんに聞いてみると、「メガチョーンよ、エビみたいでおいしいよ」と笑顔で返ってきました。
恐る恐る一口食べてみたら……あれ？ これ、全然イケる！
カリッとした食感、香ばしさ、そしてエビやナッツのような優しい風味。全然虫っぽさを感じない！
地元の人はスナック感覚で食べていて、ビールのおつまみにも最高とのこと。
このメガチョーンとの出会いで、私の中の「昆虫＝無理」という壁が少しずつ崩れ始めたのでした。
ハチの幼虫「カイプン」は想像を超えるクリーミーさ
次にチャレンジしたのが「カイプン」。ハチの幼虫です。
見た目のインパクトはなかなかのもので、特に市場で巣ごと売られていたのにはギョッとしました。
ゴツゴツしたハチの巣の中に、白くてぷっくりした幼虫がぎっしり……。
現地の人に聞くと「新鮮なら生でも食べられる」と言われましたが、さすがにそれはパス。
私は炭火で香ばしく焼いたものを選びました。
そして、一口。
口の中でトロッととろける食感、まるで白子やアン肝のような濃厚さに思わず感嘆。
バナナの葉に包んで焼いたバージョンも食べてみたんですが、これがまた香り豊かで絶品。
価格は日本円で500〜600円ほどとちょっとお高めですが、栄養価が高く、地元では子どものおやつにも人気だとか。
タイの人たちは、自然の恵みを余すことなく味わっていて、本当に感心させられました。
昆虫デビューは「チンリッド（コオロギ）」だった
実は私が一番最初に食べたのは、チンリッド、つまりコオロギです。
夜の屋台で見かけて、「旅の記念に…」と小さな勇気を振り絞って1匹だけ購入。
ガーリックと塩で味付けされたそれは、見た目こそ衝撃的だったものの、口に入れてみたら……えっ、おいしい！？
ピーナッツのような香ばしい風味に、サクサクと軽い食感。
「これ、本当にコオロギなの？」と何度も疑いたくなるほどの美味しさでした。
気づけば、2袋目を買っていた私。
昆虫食って、思っていたよりずっと身近で、驚きの美味しさだったんです。
ちなみに、最近ではこのコオロギを使った「コオロギパウダー」が日本や欧米でも注目されていて、プロテインバーやスナック、パスタなんかにも使われているそうです。
地球環境にも優しく、高たんぱく・低脂質という優秀さ。
「未来の食材」としての可能性を感じました。
「タカテーン（バッタ）」はパリパリ食感でまさにスナック
次に食べたのが、タカテーン、つまりバッタです。
コオロギより少し大きめなので、見た目のインパクトもアップ。
でも、屋台では羽や足などが丁寧に取り除かれて、きれいに素揚げされていました。
塩とガーリックのシンプルな味付けで、見た目のわりに食べやすい。
一口食べてみると……軽やかなパリパリ感！ まるでポテトチップスのような食感にびっくり。
屋台のおじさん曰く「バッタはカルシウムが豊富」。
なるほど、確かに殻がしっかりしていて、栄養がありそう。
安価で栄養価も高いタカテーンは、コスパ抜群のヘルシースナックでした。
「カイ・モッ・デーン（赤アリの卵）」は絶品の高級食材
私が一番ハマったのが、「カイ・モッ・デーン」。赤アリの卵です。
最初は名前だけで引きそうになったけど、試してみて大正解でした。
真っ白でぷっくりとした卵は、プチプチとした食感と濃厚な旨味が特徴。
私は市場で買った卵を使って、タイ風卵焼きを作ってみました。
オイスターソースとナンプラーで味付けし、卵にさっと火を通すだけの簡単レシピ。
これが、本当に贅沢な味わいなんです！
白子やウニのような濃厚さと、微かな酸味や甘みが絶妙に混ざり合って、箸が止まらない…。
赤アリの卵は採れる時期が限られているため、市場でもすぐに売り切れてしまう人気商品。
知る人ぞ知る、自然の高級グルメなんです。
一歩が踏み出せなかった「メンダー（タガメ）」
最後に紹介したいのが、結局私がどうしても食べられなかった昆虫、「メンダー」、つまりタガメです。
見た瞬間のインパクトは凄まじく、体長は5〜7cm。
屋台で「食べてみる？」と笑顔で勧められたものの、思わず後ずさりしてしまいました…。
でも匂いを嗅がせてもらったとき、びっくり。
なんと、洋ナシのような甘く爽やかな香りがするんです！
タイではこのタガメを使った「ナムプリック・メンダー」というディップソースもあり、唐辛子や野菜と混ぜてご飯と一緒に食べるんだそう。
食べられなかったことは少し心残りですが、「香りを楽しむ食材」なんていう新しい視点が得られたのは大きな収穫でした。
第一印象は…「これはムリ」だった
タイ旅行中、屋台をのぞいていたときのこと。金属のトレイに山盛りになっている、まさに“イモムシ”そのものの見た目の虫たちが目に入りました。聞けばそれが「ロッドゥアン」。竹の中に住む幼虫で、タイでは人気のスナックとのこと。
でも、正直見た目は完全にアウト。白っぽくてぷくっと太くて、ウニウニ動いているような錯覚さえ起こしそう。私は思わず一歩引き、「これは食べられないかも…」とその場を離れました。
タイ人の家庭で出された“黄金のイモムシ”
ところが、数日後に事態は急展開。タイ人の友人宅に招かれ、お茶菓子として出されたのが、まさかのロッドゥアンの素揚げだったんです。
まるで小さな唐揚げのように、カリッと揚げられた黄金色の見た目は、なぜか食欲をそそるものがありました。「無理しなくていいよ」と言われながらも、せっかくだから…と勇気を出してひと口。
その瞬間、私の中の“昆虫食”の概念がガラガラと崩れました。
サクサクした食感、ナッツのような香ばしさ、ほのかな塩味――驚くほどおいしかったんです。「虫を食べている」というより「おいしいおつまみを食べている」という感覚。これが、私の昆虫食デビューの瞬間でした。
地元でも大人気！「ロッドゥアンは別格」
後日、地元の市場でもロッドゥアンをよく見かけるようになりました。タイ人の間でも「普段は虫を食べないけど、ロッドゥアンだけは好き」という人が多いそうで、人気ぶりにも納得。
実は、竹虫は栄養価が非常に高く、特にタンパク質が豊富。しかも、自然環境にやさしく、持続可能な食材としても注目されています。
私は「これなら初心者でも安心して食べられる！」と確信し、お土産としても購入することにしたのですが…
まさかのお土産トラップ！瓶詰ロッドゥアン
旅の終盤、親しくなったタイ人の知人から「日本の友達にも喜ばれるよ」と、紙袋を渡されました。聞き取れたのは「ノーマイ（タケノコ）」という単語だけ。「あ、タケノコの佃煮か何かかな？」と思って持ち帰ったのですが、開けてビックリ。
中から出てきたのは、びっしりと詰まった瓶詰のロッドゥアン！
これは…さすがにインパクトが強すぎる（笑）。見た目そのまま、ぷっくりとしたイモムシがぎゅうぎゅうに詰まっていて、「うわっ！」と声を上げてしまいました。
でも、これがまた高級品。タイでは瓶詰のロッドゥアンは1瓶2,000円以上することもあるそうで、健康志向の人への贈り物にもなるのだとか。もちろん日本に持っていくには“相手選び”が必須ですが。
「トワマイ（蚕のさなぎ）」も意外とイケる！
ロッドゥアンで少し自信がついた私は、次なる挑戦として「トワマイ（蚕のさなぎ）」にも手を出しました。
これも屋台の名物。見た目は茶色くてぷっくりとしていて、なかなかインパクトがあります。でも、揚げたてを出されたので、ここは意を決してひと口。
結果、これまたびっくりするほどおいしい！
外はカリッと香ばしく、中は濃厚でクリーミー。ナッツのようなコクと塩味、そして少しのガーリックが効いていて、フライドポテト感覚でパクパク食べられます。まさにビールのお供にぴったり。
タイ東北部（イーサーン）ではポピュラーな昆虫食で、地元のおばあちゃんには「これは栄養満点だから元気になるよ」とすすめられました。蚕にはビタミンやミネラル、タンパク質がたっぷり含まれており、アジア圏では昔から健康食として親しまれているそうです。
でも「メンイーヌーン」だけは無理だった…
ここまで順調だった私の“昆虫食チャレンジ”ですが、ついに限界が来た瞬間もあります。
それが「メンイーヌーン（フンコロガシ）」。
黒くて丸くて、ツヤのあるその姿。見た目からして「無理…」と思っていたのですが、さらに「これはウンチを転がして生きる虫だよ」と説明された瞬間、完全にアウトでした。
一部の地域ではスープにして食べる文化があるそうですが、私は丁重にお断り。地元の人も「これは観光客にはきついよ」と言ってくれたので、ちょっとホッとしました（笑）。
タイのセブンイレブンで昆虫スナック発見！
ある日、バンコクのセブンイレブンに立ち寄ったときのこと。お菓子売り場でふと目に入ったのは、見慣れないパッケージ。よく見れば、そこには昆虫スナックの文字が！
パッケージにはイモムシやコオロギのイラストが描かれていて、スナックとして普通に売られているんです。しかも価格は20〜30バーツ程度（日本円で約70〜100円）。お試し価格としては手頃です。
私は数種類を購入し、日本に持ち帰ることにしました。
実食！家族と友人のリアクションは…
家に帰ってから、ドキドキしながら開封。まずは「イモムシのスナック」から。香ばしい匂いがして、見た目を除けばとてもおいしい！サクッとした食感とナッツのような味わいで、意外にも家族から「意外とイケるね！」との声が。
一方、コオロギのスナックは独特な匂いがあり、好き嫌いが分かれる様子。私はちょっと苦手でした…。
蚕のスナックも試しましたが、これは中から“ブチュッ”とした感触があって、食感がネック。味は悪くないのですが、慣れないとちょっと厳しいかもしれません。
オケラのスナックは意外にも好評。「これ、おつまみに最高じゃん！」と友人が気に入っておかわりしていたのが印象的でした。
昆虫食は世界で注目の“未来食”
タイでは昆虫食が伝統的に親しまれてきましたが、実は今、世界中で昆虫が「未来の食材」として注目されています。
その理由は、圧倒的なエコ性能。昆虫は少ないエサと水で育ち、温室効果ガスの排出も少ない。さらに、たんぱく質の含有量が高く、持続可能な食糧として理想的なのです。
ヨーロッパやアメリカでは、コオロギパウダーを使ったクッキーやパスタなどの加工食品も販売され始めており、日本でも一部のスーパーで見かけるようになりました。
まとめ：挑戦してよかった、タイの昆虫食体験
初めは抵抗感しかなかった昆虫食。
でも、タイで実際に地元の人たちの暮らしに触れながら、少しずつその魅力を知ることで、自分の中の「偏見」がほどけていったように思います。
・スナック感覚で楽しめるメガチョーン
・クリーミーで栄養価の高いカイプン
・驚きの食べやすさのチンリッドとタカテーン
・高級食材としてのカイ・モッ・デーン
・そして、香りで印象に残ったメンダー
タイには、ただ「食べる」だけではない、文化や知恵、そして自然との共生の形がありました。
もしあなたがタイを訪れる機会があれば、ぜひ一度だけでも昆虫食にチャレンジしてみてください。
きっと、あなたの中の世界が少し広がるはずです。